第4章 弓張月
『ん...此処は?』
「俺が世話になってる人の隠れ家だよ」
葉月が目を覚ますと微笑みを浮かべる大翔の姿が目に入った
『貴方何でここに...戦国時代に居るの?』
「さあな、よくわからないが
遊びにいった先で嵐にあったって所まで覚えてる」
『貴方もしかして...』
「お喋りはそこまでだ
大翔なぜ女を縛っていない」
扉を開けて入ってきた顕如はジロッと大翔を睨んだ
「すぐ縛るから睨まないでくれ
悪いな姫さん手出してくれるか?」
『そう言われて素直に出すと思っているなら
馬鹿としか言いようがないですよ?』
わざと悪態をつきツンとそっぽを向いた
"葉月"と名前ではなく"姫さん"と呼んだ
つまりこの男に私と知り合いだと知られると不味いことがあるのだろう
「ところでもう一人は?」
『(もう一人?)』
「武田信玄にもっていかれた」
「は?武田信玄?もっていかれた?
アンタの部下使えないな」
葉月の手を縛りながらため息を吐いた
「そう言うわけでお嬢さん
名前を教えてもらおうか」
『名前を教えてほしいならまずご自分から名乗るのが礼儀ではないですか僧侶さん?』
睨む顕如に怯むことなく目線を合わせにっこり微笑んだ
「...失礼した。私は顕如と申す」
『あら、その名前聞いた覚えがあります
たしか信長様の首を狙っている僧だと』
「そのとおりだ、私は信長を殺すためだけに生きてきた
本能寺では邪魔が入って殺し損ねたが今回はそうはいかぬ
寵姫を武田に取られはしたが、それなら信長と武田を戦わせればいいだけのこと
戦力が削げればそれはそれで好都合だ」
「災い転じて福となすってやつか?」
「それにまだこちらには徳川の女と言う切札もある
で、お嬢さんの名前を教えていただきたい」
『...私は葉月と申します』