第4章 弓張月
「うきゃ!」
ここは信長がいる本陣
刀のぶつかる音や人々の怒号が響く度に
小さな悲鳴をこぼす桜花
「桜花......少し静にしろ」
「うぅ~すみませ~ん...」
「信長様」
「三成か、なにごとだ」
「上杉謙信と武田信玄の姿を見たと言う者が」
本陣に帰ってきた三成はいつもの笑顔ではなく
キリッとひきしまった表情で告げた
「ほう、龍と虎が出たか」
「いかが致しましょう?」
「秀吉出るぞ、桜花来い」
「へ?!」
ニヤッと笑い桜花の手を引き立ち上がった
「信長様!桜花を連れていくのですか!?」
先に桜花を馬に乗せその前に乗った
グッと手綱を引くと馬が前足を高く上げた
「ちょっ落ちる!!」
ギュッと信長の腰に抱き着き落下は免れた
「お待ちください信長様!」
「うるさい秀吉
心配ならお前が後ろを守っていろ」
勢いよく走りだした信長に続き秀吉も馬に乗って走り出した
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『はい。出来ました』
「ありがとうございます葉月様!」
ここは家康が布陣を構える一角にある救護テント
負傷した兵たちが入れ替わり立ち代わりにやってくる
簡単な応急処置だが兵たちは葉月に治療してもらい
痛みに顔を歪めながらも嬉しそうに立ち去っていく
手を洗おうとそばに置いてある桶を見るもすでに水は濁っていた
『水を変えてきますので暫くここを頼みます』
「葉月様そのようなことは私共が致します!?」
桶を持って立ち上がると足を負傷した兵が慌てて立ち上がろうとした
『大丈夫ですよ直ぐ其処に小川が流れていますし
これぐらいのことしか私は出来ませんので
それに貴方は足を怪我しているのでしょう?』
ありがとうと言い
にっこり微笑んでテントを出ていった