第3章 三日月
土誇りにまみれてしまった着物を脱ぎすて
チャプンと音を立てて温泉につかる
薄暗い中で入っていた時には気づかなかったが
周りは自然に囲まれた天然の露天風呂に
手作りの木の囲いがあり覗き防止かな?と首を傾げた
『星空の露天風呂も良かったけど
お昼に入るにも緑が見えていいわね』
♩♬🎵~♫🎶~♩♬🎵~♫🎶~
上機嫌で歌を歌いながら長い黒髪を洗っていく
綺麗に土誇りを落とし終えて
手足の力を抜いて浮かぶと
瞳を閉じる髪がユラユラと水面を漂う
°˖✧◝◜✧˖°°˖✧◝◜✧˖°°˖✧◝◜✧˖°°˖✧◝◜✧˖°
「この先に温泉があります
今の時期は殆ど利用がないので
ゆっくりと楽しんでください」
「わかった」
出会った村人に案内してもらいたどり着いた温泉
さっさと入って帰ろうと着物を脱ぎお湯につかった
風が吹きサワサワと緑が揺れる
濡れた髪をかき上げていると
視線の端にゆらゆら漂う黒い物体
気配を消してそっと近づいて行った
「.....なにしてんの?」
『!?なななんで、なんでここに!?きゃっ!?』
立ち上がろうとした葉月だったが
慌てすぎてバシャンと沈んでしまった
「はあ...ほんとなにしてんの」
手をもってザバッと引き上げるとケホケホッと咳き込んだ
『あ、ありがとう』
「それで」
『え?』
「浮かんでたみたいだけどなにしてたの?」
『一人の時間を満喫してました...
家康が居るって知ってたらこんな事してないし
と言うかこの時代の人気配消すのうますぎる...』
家康に背を向け口元まで温泉につけたままモゴモゴ喋る
「.....ねえ」
『なに?』
「いつもと喋り方違う、こっちが素?」
『!?..........そうだよこっちが素
桜花も知らないのに家康にはバレちゃったね』