第3章 三日月
「謙信様そろそろ出発しましょうか」
夕暮れに染まる空の下温泉へと歩き出した
佐助の手には謙信が月見酒を飲みたいと言うので
酒と徳利と盆を持っている
「楽しみだな~
可愛い姫とか美しい天女はいるかな」
「雌猿ぐらいなら居るんじゃないですか?」
「楽しみを壊すようなことを言うなよ幸」
「うっさいわ!口を開けば女のことばかり!?
アンタは甘味でも黙って食ってて下さい!」
町からは少し離れている温泉
薄暗い中賑やかな声が辺りに響く
いくつにも分かれて温泉が湧いている
一番近い温泉に到着して謙信が服を脱ぎ湯に入る
それを横目にいそいそと佐助は晩酌の準備に入る
「おーい佐助
美女はどこだ?」
「もう上がった後かもしれませんね」
「そうかそれは残念だ....仕方ない甘味でも食べるか」
「はいはい。大人しく食べててください」
「幸村の言うとおりだ酒が不味くなるお前は黙って食っていろ」
半刻ほど温泉で過ごし酒が無くなりかけた
「佐助」
「はい。どうかされましたか?」
「酒が無くなった」
「...ではすぐ調達してまいります」
「お~い幸
甘味ももう無いぞ」
「まだ食う気ですか!
全く佐助と行ってくるんで大人しく待ってて下さい!」
腰を上げた幸村と佐助は早くしないと店が閉まってしまうと
急いできた道を走っていく
追加の甘味と酒、あと謙信の好物の梅干を購入して今度は馬に乗り温泉へと向かった
「お待たせしました」
「今日はこれで最後だから味わって食ってくださいよ」
「ありがとうな幸
お前らも湯に入ったらどうだ?」
「そうさせてもらいます」
「ゆっくりできるわ~」
着物を脱ぎ湯につかってのんびり......出来るはずもない
「幸村、俺の酒が飲めんのか?」
「いただきますよ!!」
「幸~せっかく楽しみにしていたのに
何が悲しくて男4人で温泉に入ってるんだ?」
「も~うっさい!!黙って甘味食っててください!?」
「もう全部食べてしまった」
「じゃあ俺と変わって謙信様の相手して下さい!?」
せっかく湯につかっても幸村の疲れは増すばかり
謙信を信玄に押し付け気づかれぬよう着替えをもって
少し離れた温泉につかった
「今度こそゆっくりできる...」