第9章 立待月
「っん....」
「葵、本当に良いの?」
こくんと頷く葵の手を引き
小屋の中に入った
お昼過ぎとはいえここは森の中の小屋
中は閉めきっているため薄暗い
「初めてはもっとロマンチックにしたかったな」
「ろまん?」
「何でもないよ」
可愛く小首を傾げる葵のおでこに
チュッとキスを落としシュルリと帯をほどいた
「あっ」
パサリと床に落ちた帯
締め付けがなくなり緩む着物を
そっと肩から抜き去ると襦袢姿
現代で言うと下着姿になった
「もう一度聞くよ
葵の初めてを
俺が貰って良いんだな?」
恥ずかしそうに俯いていた葵は
そっと触れるだけの口づけをして
キュッと大翔に抱きついた
「大翔様が良い....」
「葵....優しくする
痛かったらちゃんと言いなよ?」
おでこに頬にキスをしながら
襦袢の紐をほどき襟元から手を差し入れた
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"優しくする"と言った大翔様は
褥に横たえたわたしの反応を見ながら
ゆっくりと肌を撫でる
「....っ」
撫でていた手が胸の頂を掠め
声が出て慌てて口を押さえた
「声、聞かせて?」
手を口から離され指を絡め
優しい口づけが降ってきた
「あっ....大翔さ、ま」
「大翔」
「え?」
「様はいらない
大翔って呼んで」
「大翔....」
「うん。なに?」
「ふぁ....あ、あいし、ていま、す
あなたを、大翔だけを....」
「俺も、俺も葵を愛してるよ」
大翔様から与えられる快楽の中
鈍痛が体に走り涙が瞳から零れた
初めてを貴方に捧げることが出来た
わたしは幸せです
もう会うことが叶わぬとも.....