第9章 立待月
大翔が店を出ていき
しゃべる者が居なくなった甘味屋
「あ~お前さ.....」
「幸村、お前じゃなくて"葵"さんだよ」
沈黙に耐えかねて喋りだした幸村だったが
佐助にちゃんと名前を呼ぶよう言われ頭をガシガシ掻いた
「はいはい分かりましたよ!
葵お前町娘じゃねえだろ?」
「え?」
「北条城主、北条高広様の娘
北条葵さんですよね?」
「ご、ご存じだったのですか?!」
「俺は知らねえ、町娘じゃねえって思っただけだ
コイツは謙信様の忍びだからな
どうせ天井裏とかから見てたんだろ?」
「企業秘密です」
「あの、このことは大翔様には.....」
「言わない」
「え?」
「そうだなこういう事は
自分の口から言うもんだろ?」
「えっ?!」
「あ?佐助なに驚いてんだよ?」
「いや、色恋に疎い幸村が
真面なことを言ってるものだから
大丈夫?どこか体の調子が悪いのか?」
「さ~す~け~
俺を何だと思ってんだっ!?」
「どうどう幸村」
「俺は馬じゃねぇよ!?」
「ふふふっ
ありがとうございます」
じゃれあう二人を見て楽しそうに笑う葵
「べ、別にお礼言われる様な事してねぇし
兎に角だ!
アイツは身分とかそんなの気にしねぇよ」
「そうだよ葵さん
頑張って応援するよ」
「はい
時間はあまりありませんが
悔いが残らないよう精一杯頑張ります」