第9章 立待月
「はぁ~謙信様の相手は疲れるな~」
「そうですね大翔さん」
「お前らは殆ど参加してねえだろうがっ!!」
今日も程よく相手をして一抜けし
佐助と応援に回っていた俺たちに怒りを向ける幸村
昼から謙信様にお客様が来るらしく邪魔者三人は
仲良く城下町の甘味屋にやって来た
「いらっしゃいませ」
「お茶と団子を四人分よろしくな」
「は?四人分??」
「そっ四人分
葵こっちにおいで」
「!?は、はいっ」
返事をしておずおずと店の陰から出てきた葵に
優しく微笑み隣の席をポンポンと叩いた
「こっちが信玄様のとこの真田幸村で
そっちは謙信様のとこの佐助
んでこの娘は葵」
「よろしくお願いいたします」
挨拶を交わして無言でお茶をすする四人
いい天気だな~と他愛もない会話をしていた
「あっ!
謙信様に使い頼まれてたの忘れてた
ちょっと行ってくるから待ってて」
「はい。いってらっしゃいませ」
甘味屋を出て向かったのは漬物屋
暖簾をくぐり中に入ると店主は接客中だった
仕方なく暫く店内を...と言っても
さほど広くはない店の中だが
置いてある商品を眺める
現代の着色料たっぷりの商品とは違い
自然な色合いをした漬物
もちろん防腐剤も入っていないから体に良い
が、その分日持ちしないのがデメリット
「ありがとうございました。
おや?大翔様ではありませんか!
今日はどういった物をご所望でしょうか?」
俺気づいた店主が声をかけてきた
"いつもの"それだけを伝えれば店主はいそいそと
店の奥に入り小さな坪を持って出てきた
坪を受け取り中身を確認して
またよろしくなと店を後にした
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「.....店主さっきの男は誰だ?」
「あのお方は最近謙信様が
お召し抱えになられたお方です。
謙信様の右腕、直江兼続様のお墨付きでございます」
「直江殿の.....」
「それに謙信様にも引けを足らないお強さだとかで
噂では上杉家に養子に入られるとお聞きしております」
「.....また来る」
男は暖簾をくぐり大翔が去って行った方向を
じっと見つめていた