第9章 立待月
「信玄様~大翔様~」
「やあこんにちはお嬢さん」
「俺に様は要らないって言ってんのに
俺はただの居候だぞ?」
城下に住んでいる娘たちは
現代の女と違って擦れてなくて
純粋で可愛い娘たちばかりだ
「大翔様....こんにちは」
「こんにちは葵
元気にしてた?」
その中でもこの娘は可愛い
庶民に見えない美しい所作に美しい黒髪
どことなく葉月に似ているが
恥ずかしそうに上目使いで見上げる瞳
こんな瞳の葉月は見たことない
「葵も一緒に団子を食べよう」
信玄様の計らいで一緒に甘味屋に入り並んで座る
程なくして運ばれてきた団子を葵に手渡した
嬉しそうに微笑んで口に運ぶ
葉月も徳川と一緒の時は笑ってたな.....
って未練がましいぞ俺
「大翔様?どうかしましたか?」
「あ~何でもない.....」
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大翔様に初めて会ったのは一週間前
父について春日山城に訪れた時だった
お忍びだと言う父、城には一人で入って行った
わたしはと言うと町娘の格好で城下を回って待っていた
「信玄様~大翔様~」
その声に反応してそちらに視線を向けると二人の男性がいた
一人は上杉家と同盟を組んでいる武田信玄様
もう一人は初めて見る方だった
「おや?葵じゃないか一人かい?」
「父と一緒に来ています」
「信玄様知り合いですか?」
「ああ、彼女は.....」
「は、はじめまして葵と申します!」
「俺は大翔って言うんだよろしく」
ニコッと微笑むその笑顔に一目惚れしました