第9章 立待月
「大翔~今日も城下に行くが
一緒に出掛けるか?」
「良いですね~お供いたします信玄様」
昼過ぎ暇を持て余していた俺のところに
ひょっこりと顔を出した信玄様
今までは黙って城を抜け出していたようだが
俺が来てからと言うもの出掛ける時は
必ず声をかけてくれている
"幸村でなくていいのか?"と聞いたことがあったが
"幸村は煩いからな"と苦笑いを浮かべていた
どうやら幸村は信玄様の体を心配して
制限を沢山かけているようだ
いつも頑張ってもらってるし
信玄様の面倒ぐらい見てやるか
それに城下は楽しいしな
「前から思っていたが大翔は馬に乗れるんだな」
「ええ、それなりに家が裕福だったので」
そう俺の家は金持ちだ
俺は何不自由なく育ってきた
自分で言うのもなんだが
文武両道で顔だってイケメンの部類に入る
綺麗な婚約者までいた
まあ今やその婚約者は
徳川家康の妻になったけどな
「あ~新しい恋がしたいわ~」
「そう言えば大翔は葉月の"元"許嫁だったな」
「信玄様心抉りますね~
俺泣いちゃいますよ?」
「男に泣かれても嬉しくないな
どうせなら可愛い娘を啼かせたいものだよ」
「同感です」
城から続く長い下り坂を城下へと
二人で馬に揺られ進んでいった