第8章 十六夜月
御殿に帰って来て自室の襖を閉めると同時に桜花の唇を塞いだ
キュッと俺の着物を掴みながら必死に俺の口づけに答えようとする桜花
もっと、もっと桜花を感じたい
後頭部に手を回し栗色のふわふわした髪に指を差し込み引き寄せさらに深く口づけると桜花が空気を求めかすかに口を開いた
後頭部の手はそのままに一旦唇を離すと肩で息をし必死に息を整えようとしている
「秀吉さん.....もっとして?」
頬を赤く染めて恥じらいながら潤んだ瞳でこちらを見上げる
その姿は普段のドジで子供っぽい桜花と違い妖艶で女の顔をしていた
「好きだ桜花」
グッと引き寄せ開いた唇に舌を差し入れ舌を絡ませた
このまま抱いてしまいたい、だが
まだ信長様から許しを貰ったわけではない
桜花は表向きは織田家縁の姫なのだ
その姫に許しなく手を出せばどうなる事か.....
時折桜花から漏れる甘く甘美な声に俺の理性がぐらぐらと揺れる
ゆっくりと唇を離しギュッと桜花を胸に抱きしめた
「秀吉さん?」
「明日から仕立てるんだろ?」
「え??」
「隣の部屋に褥を用意させるから泊っていけ」
そっと肩に手を置き引き離そうとすると俺の着物を持ってそれを拒否する
「あの...一緒に寝ちゃダメ?」
そんな可愛い顔で見つめるのは止めてくれ
顔に手を当て今にも崩れ落ちそうな理性を総動員し
苦笑いを浮かべ桜花の申し出を了承した
着物を脱ぎ襦袢姿になり褥に二人で横になった
桜花は俺の腕の中で安心してすぐに寝息を立て始めた
好きな女が腕の中にいるのに手を出せないなんて.....
すやすやと眠る桜花、時折小動物の様に胸元に擦り寄る
俺は誘惑と闘い一睡もできぬまま朝を迎えた