第8章 十六夜月
あまり眠ることが出来ぬまま朝を迎え朝餉を食べると
俺は足取り重く城へと向かう
ああ...朝陽が目に染みる
入り口で三成に会い先に鍛錬場に行くよう指示を出した
「おはよ~秀吉さん」
「おはよう桜花」
桜花を迎えに行き一緒に鍛錬場へと向かった
そこにはすでに信長様と政宗、光秀が来ていた
その後、不機嫌な顔の家康を連れて葉月が入ってきた
暫く談笑していると利家がやって来た
にこやかに挨拶をしてくる利家に対し
眉間に皺を寄せながら挨拶を交わす家康
「よう家康、機嫌悪そうだな」
「それはそうだろう
許嫁を取られるかも知れないのだぞ?」
「お前らいい加減にしろ!?」
ニヤニヤしながら家康を弄る二人を叱責していると"秀吉さん"と声をかけられた
「ど、どうした家康?」
「元はと言えば秀吉さんのせいなんですよ?
万が一にでも葉月が負ける様なことがあったら
どうなるか分かってますよね?」
え゛!?どうなるんだ!!
顔を引き攣らせグルグルと色んなことを考えている間に葉月は着替えを済ませた様で衝立から出てきた
その姿を見て"足出しすぎだ!?"と注意をした
"あの格好見るの初めてでもないだろ?"と笑う光秀
"綺麗な足だな家康"と揶揄う政宗
"どの様な恰好をされても美しいですね"と微笑む三成
ぽりぽり頬をかきながら待っていた利家が言葉を発しやっと試合が始まる
三成が立会人をしそれに従いそれぞれが木刀を手に持ち中央に立ち互いに木刀を構えた
「では....始め!」
先に仕掛けたのは葉月だった
ギリギリで避ける利家に間髪入れず攻撃をする葉月
しかし上段から振り下ろした木刀を弾き飛ばされた
「葉月の負けみたいだな」
おいっ!冗談じゃない勝つな利家!!?
絶望的な場面で光秀が"よく見てみろ"と顎で示す先には木刀を飛ばされても表情を変えない葉月
『まだ勝負はついていません。まいります』
これはあの時と同じ動きか?
唖然として目の前の光景を見ていると利家を壁際までふっ飛ばし転がった利家の腹の上に跨り動きを封じこめた
試合は葉月の勝利で終わった
"狡い"と言う利家に対し"手足があれば十分戦えます"と微笑み答えた