第8章 十六夜月
桜花が驚き知り合いか問えば
"以前にあったことがあるだけ"と
「俺が嫁に貰ってやるって言っただろ」
『あら、そうだったかしら?
全く覚えてません』
「覚えてねぇ訳ねぇだろ
お前の屋敷に毎日通ったんだぞ?」
『しつこい男性と私より弱い男性は嫌いです』
「思った展開じゃねぇな」
「だが、これはこれで面白くなりそうだ」
「まあなんだ、利家落ち着け」
ニヤニヤしながらつぶやく政宗と光秀
目の前で繰り広げられる展開に安堵した
「なにほっとしてるんですか秀吉さん」
あからさまにほっとする俺は家康に睨まれサッと目線をそらした
「葉月貴様なぜ利家を知っている」
『...お義父様の屋敷によくいらしていたんです
でも私が知っているのは利家ではなく"犬千代"です』
「腕試しするのに流石に"前田利家"じゃあ都合悪いだろ?
だから幼名の"犬千代"って名乗ってたんだよ」
『幼名.....』
何かを呟く葉月だったがよく聞き取れなかった
利家と葉月の様子を伺っていると信長様が愉し気な笑みを浮かべているのが見えた
「葉月と勝負をして勝てたなら
嫁にすることを許してやろう」
と信長様がとんでもないことを言い出した
「明日試合をする必ず来い」
怒りが頂点に達し葉月の手を無言で引き広間を出ていく家康に声をかけた
「気合入れないとな!?」
「良かったな
でも葉月に勝つのは難しいんじゃねえ?」
「確かに葉月の薙刀捌きと言いあの動きはただ者ではないぞ」
「時に利家」
「はい」
「そこに居るのは織田家縁の姫の桜花だ」
は!?この流れで桜花の話に戻るのか!?
「はじめまして!桜花です!?」
「はぁ...」
ビシッと背筋を伸ばし直角にお辞儀をする桜花を見て
俺は頭を抱え小さな溜息を洩らし
「ふぇ~んごめんさない秀吉さん」
いきなりの紹介に小首を傾げながら"前田利家です"と軽く会釈をする
「さて利家、明日は心してかかれ」
「はっ!」