第8章 十六夜月
「秀吉さん」
「なにか用か桜花?」
顕如を捕らえてから数日後の昼下がりに桜花が仕事部屋を訪ねてきた
「これ!私の気持ち
秀吉さんのために仕立てたの貰ってください!?」
「良いできだな~
そうだ!信長様にも仕立ててくれるか?」
頭を撫でながら微笑めば微妙な笑みを浮かべ
"わかった"と一言言って部屋を出て行った
「なんだ?俺おかしなこと言ったか?」
「いえ何も言われてないと思います」
それから数日後のある日
「秀吉さん!」
「ん?どうした桜花?」
今度は俺の御殿に遊びに来た桜花
「あ、の...好きです!?」
「俺も好きだぞ」
「え!ほんと?!」
「ああ、この饅頭美味くて好きだぞ」
遊びに来た桜花にお茶請けに出した饅頭
甘みの中に仄かに口に広がる塩味が絶妙だ
"そ、そうだね"と引き攣った笑みを浮かべ
饅頭を持って部屋から出て行った
さっきのはさすがにびっくりした
饅頭じゃなく俺を好きだと言って欲しい.....
「駄目だ駄目だ!!桜花は妹だぞ何を言ってるんだ!?」
さらに数日後の夕刻
「秀吉さん!!」
仕事を終え仕事部屋で三成の帰りを待っていると桜花が勢いよく部屋に入ってきた
「どうした桜花?」
「好きです私と付き合って下さい!!」
「ああ良いぞ
知らなかったなあ桜花が囲碁が好きなんてな」
今日は三成と囲碁をする約束で碁盤が出されていた
その碁盤の前に座った桜花
すぐさま了承し碁石に手をかけるも
"秀吉さんのバカー!!"と走り去ってしまった
「桜花!廊下を走るんじゃない!?」
その日を境に桜花は俺を避けるようになった