第8章 十六夜月
「なあ」
「なんだ真田」
「うちの信玄様もアレだが
お前のとこもなんて言うか大変だな」
真田は二人のやり取りを呆れ顔で見た
信玄の女好きは聞いていたがここまでとは
三成は天然だから良いとして...いや良くないか
はあと大きな溜息を吐きにこにこと笑いながら軽く刀を触れ合わせる信玄と三成を見ていた
「幸村様、信玄様
そろそろお時間でございます」
佐助からであろう伝令が信玄たちのもとへやって来た
「おや、もうそんな時間かい?」
「それじゃあ仕上げにかかるとしますか」
「楽しい時間だったぞ石田三成!
さあ天女を返して欲しくば力ずくで来い!!」
「そのようですね。いざ尋常に勝負!」
ああ、やっと終わったのか...
激しい鍔迫り合いに桜花は声無き悲鳴を上げていたその時
「信玄様そいつ邪魔じゃないですか?」
信玄が"見張ってくれる者"と言いながらチラッと後ろを見た
「!?信玄様、どうか私にお任せください!?」
アイツが裏切り者か...
信玄は桜花を男に託した
思わず体が動きそうになったがグッと堪えた
信玄が幸村に目配せをし後を付けていった
暫くして幸村が帰って来た
「桜花はどうなった」
「言い方は可笑しいが無事に敵の大将のところに行った
南の方角から仕掛けてくるだろう」
「わかった俺たちは後ろに回り込む
そっちは任せたぞ」
「わかった
ほら信玄様行きますよ」
「石田三成
なかなか楽しい時間だったぞ」
「恐れ入れます」
馬に乗って去っていく信玄たち
俺と三成は顕如に気づかれぬよう後ろに回り込んだ
桜花無事でいろよ
じっと息を潜め合図を待つ
すると空に一本の弓矢が飛んだ
「合図だ、行くぞ三成」
「はい秀吉様」