第8章 十六夜月
「待て
貴様一人で敵陣に来るとはなかなかの度胸
して、誰の使いだ」
「お褒めいただきありがとうございます
俺は上杉家に使える忍び軒猿頭領の佐助と言います」
上杉の忍びと聞き刀を持つ手に力が入る
「ほお、その上杉の忍びがなんの用だ」
信長様の問いに無表情で淡々としゃべる佐助"用件は三つ"と
一つめで桜花を保護し元気だと聞いた
安堵と共に別の心配事が増えた瞬間だった
上杉はともかく武田が手を出さないかと
そして二つめ"第三者の関与"
これに関してはすでに顕如だと判明している
「では三つめ、これが一番重要な事です
姉が......攫われました」
ん?と皆が首を傾げた
家康は"俺たちには関係ない"と言い放つが佐助が次に言った言葉に目を見開いた
"姉の名は葉月、貴方の許嫁は俺の姉です"
夜が明け東の空が明るくなり
また戦が始まる
「手加減の必要はない
が、殺す必要もない」
「了解。一暴れしてくるか」
ニヤッと笑みを浮かべ政宗は敵陣へと斬り込んで行った
昨日佐助に言われた作戦は至極簡単なものだった
"このまま戦を続けてください"
ここは政宗に任せ俺は桜花の無事を確認すべく
一緒に居るはずの武田信玄のもとへと急いだ
「桜花!?」
「桜花様ご無事ですか?」
「秀吉さん、三成君!!」
佐助が言った通り信玄は少数の兵を連れ堂々と戦場を移動していた
「豊臣秀吉と石田三成か。天女を返して欲しくば
信長の首を差し出せ」
コイツ!信長様の命と交換などできるか!!
「それは無理な相談ですね
他の物ではだめでしょうか?」
「う~んそうだな~
代わりに葉月を貰おうか?」
はあ!何言ってるんだコイツは!?
「それも無理ですね
葉月様は家康様の物ですので」
三成.....葉月も桜花も物じゃないぞ
「では、天女や葉月のような愛らしい女人を...」
「信玄様は面白いことおっしゃいますね
桜花様や葉月様の様な可憐で美しい女性は
そうそういらっしゃいませんよ?」
「それもそうだな~」
ここは戦場だよな...?なんだこの雰囲気は