第8章 十六夜月
「三成、これを家康の御殿に届けてくれ」
「はい秀吉様」
家康が臥せっている間は葉月が酒井と簡単な仕事をこなしているので
書状を三成に手渡し家康の御殿に送り出した
それから四半刻程したところで三成が葉月を連れて帰ってきた
「葉月お前今なんて?」
葉月から言われた言葉が理解できず聞き返した
『あら聞こえませんでしたか?
村の様子を見に...』
「村の様子を知りたいのは分かった
が!わざわざお前が行く必要があるのかってことだ!」
『実際に行ってみないと状況が分かりませんし』
「それはそうだが...」
お前が男なら"行って来い"と送り出してやれる が!お前は女なんだぞ!?
「秀吉様、葉月様のお供してもよろしいでしょうか?」
三成が一緒か...家康が嫌がるだろうが一人で行かすよりはいいか
"滞在は3日、それ以上は認めない"と条件をだした
出立の準備をするため部屋を出る三成を見送り葉月と共に家康の御殿に向かった
「は?バカなの?」
『あら心外です』
葉月の話を聞きため息を吐く家康
俺の"期限は3日。供に三成をつける"と言う言葉を聞き眉間に皺を寄せた
そんな家康に葉月は"早く怪我治してね"と笑顔を向けた
「そう言う訳だ諦めろ」
「....わかりました
無茶だけはしないように」
何を言っても無駄と悟った家康はしぶしぶ了承をしたのだった
『ふふっわかってる。いってきます』
「....気を付けなよ」
家康がボソッと言った言葉が
部屋を出ていく俺と葉月の耳に届いた
「家康はもうちょい素直になればいいのにな」
『あら、最初に比べれば随分距離は縮まったと思いますよ?』
あれで縮まったのか?
家康はよっぽど話をしてなかったんだな
御殿の入り口に来ると三成が待っていた
"十分気を付けろ"と三成に言うと
「はい承知しております
秀吉様行ってまいります」
『いってきます』
二人を送り出し俺は信長様に報告をしに城へと足を向けた