第6章 波乱の体育祭
「お婆ちゃん行きたかったけれど……ごめんねぇすみれちゃん。」
「無理しないで、足腰が弱いんだから。痛めたら、またお婆ちゃん顔を歪ませる日々が続いちゃう。」
体育祭、当日。玄関までお婆ちゃんが送っていってくれた。お婆ちゃんから手を握られて暖かさを感じる。
「心配、ありがとね。でも、テレビから応援しているわ。
お婆ちゃん、心配事があるの。」
「何。」
「すみれちゃんが、傷付くことがね心配なの。無理しちゃうから。」
昔の古傷があるのに、お婆ちゃんはそんなことを言う。
私なんて、腹、背中など傷跡が多いのに今頃傷が付いたってどうってことは無い。あ、でも、血とか細胞とか取られたら負けちゃうな。
そんなお婆ちゃんのシワシワな手を握り返す。
「大丈夫だよ。それじゃあ、行ってくるね。」
「いってらっしゃい。頑張ってね。」
扉を開けて、手を振る。お婆ちゃんも振り返してくれた。そのまま、扉を閉めると隣の扉も閉まる音が聞こえてきた。
「出久、おはようございます。」
「おはよう!凄く偶然、今から行く感じ?一緒に行こう。」
「はい。」
出久とも、ライバル同士になってしまうのか。正直に言うとあまりなりたくない。皆さんのことをしていたいのが本音だけれどもお婆ちゃんが"頑張れ。"と言ってくれたから頑張らなければいけない。
「お互い、体育祭頑張ろうね。植村さんがどう戦うのかが想像できないよ。」
「……どうでしょうね。私は出久が心配です。また、傷ついてしまうのではないかと。」
「あはは、きっとそれは逃れなれないと思う……。」
でも、体育祭は過激ですから傷は付き物だよね。
目線を逸した出久の黄色い鞄を軽く引っ張った。
「……それでも、お互い良い成績を残しましょうね。」
「うん!!頑張ろう!」