第2章 お友達
胸のざわめきが凄く起こっている。一定のスピードで鼓動が行われている。こんな経験も初めてだ。
朝、いつもよりも少し早めの満員電車に乗り、いつも通りの通学路を歩いていても何だか体はいつも通りではないらしい。
下駄箱に付くと震える手で靴を入れ替え上履きには履き換えた。
「植村さん、おはよう。」
「おはようございます。」
「……蛙吹さんと百さん。」
神様は私に奇跡を起こしてくれたらしい。後ろを見ると2人が私に挨拶をしてくれた。今だよ、今がチャンスだよ。そう自分に言い聞かせては、2人が上履きに履き替えるまで待った。
「植村さん……?」
「……昨日は、傷付けてしまってすみませんでした。」
「そんなことは無いわ。ただ、私がせっかちだっただけよ。気にしなくていいの。」と蛙吹さんが言った。でも、あの状態では悲しそうだったのできっと私の考えが正しければ……。友達になってくれるかもしれない。
「言い訳に聞こえると思いますが、ずっと1人でいてこんな体験初めてして……、言われた時、胸が暖かくなるような感覚になりました。でも、なんて言ったらいいか分からず……。」
「植村さん……。」
ふぅっと一息をついて、2人の目を見るように見た。
2人とも待っていてくれて凄く言いやすい雰囲気になっている。きっとそれは2人の人柄の良さだろう。
「でも、考えてきました。なぜこんな気持ちになったのか、どう言えば良いのか。」
「……私で良ければ、友達になりませんか……ん?」
そう言葉に出した瞬間、急に目線が暗くなり目の前には大きな胸。体に衝撃が走り、悪く言えばタックルされたような感じほど勢いがある。顔を上げると百さんが抱きしめていた。
そして、横には蛙吹さんが優しく微笑みながらそっと私の手を握る。凄く手も体も暖かい。いつぶりだろうか、抱きしめられたことは。
「ぜひ、友達になりましょう!!」
「良いの。すみれちゃんだから友達になりたいの。」
心が春の日差しのように暖かい。初めてかもしれない、こんな気持ちは。中学の時もなかったし、家でもお婆ちゃんお爺ちゃん以外なかった。こんな体験、私がしても良いのか。
百さんが慌てながら私から離れて、後ろからは麗日さんの「おはようー!」と元気な声が聞こえてきた。