第9章 M&O
大学生になってお兄ちゃんは、突然留学することを決めた
もともと絵が好きで将来は画家になりたいって言ってたから不思議ではなかったけど、いなくなってしまうなんて考えたことはなかった
それからというものお兄ちゃんは準備に忙しく、なかなか一緒にいられなくなった
それでも近所だから会うことはできる
たまにお兄ちゃんに会えるたびに、行かないでって何度も言いそうになった
それでも、引き留めるのは夢を否定するようなものだから
いなくなってしまうのは寂しいけれど、夢を叶えて欲しいというのも事実だから
笑顔で送り出そうと決めた
「行ってらっしゃい」
「行ってきます」
別れはあっさりしたものだった
泣くわけにもいかないしね
行ってしまう前に告白しようかとも思ったけど、バタバタしたまま言いたくなかったから
帰ってきてからきちんと伝えようと思った
1年間だけだから……と自分を慰めて笑顔をつくって送り出した