第13章 言の葉の音に2(西谷夕)
新幹線の待合室、もっとごった返していると思ったのに、オフシーズンに突入したのか、すかすかだった。
「いつか迎えに行くから、待ってろ!」
「うん、いつまでも、待ってるね……」
「試合も、絶対見に来い!!」
「行く…!」
ホームまでキャリーバッグを運んでくれると、出発のアナウンスが流れる。
最後の最後は、お互い、一言も交わせなかった。
ホームが流れるように離れていくのを見ているしかなくて。
それはすごく速くて。
ここ最近の楽しかった毎日みたいだった。
「声、忘れちゃいそうだよ…」
なけなしの聴力で拾った声を思い出して反芻する。
前よりも、怖くはなくなっていた。
間もなく、私の日常に、昔馴染みの静寂が訪れる。