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【短編集】【HQ】純情セレナーデ

第13章 言の葉の音に2(西谷夕)


「やっと支援学級に入れるわよ」
書類を見せながら、お母さんは言った。
難聴気味の私は今までギリギリのラインにいたせいで、そういった支援を行っている学校に入ることが出来なかったが、今回やっと認められたそうだ。
「よかった…」
「2学期から都内のその学校だから。
寮制で設備も整ってるから凄く暮らしやすいと思うわよ」
「…え?」
「少し寂しいけど、新しいお友達もすぐ出来るわよ」

呆然としてしまった。
やっと、仲良くなったのに。
いつ言おうか、と携帯を片手に布団に入って悩む。
『今合宿中!!』
『楽しそうだね!』
『盛り上がってるぞぉー!!』
何枚かの画像が受信されて、のぞいてみた。
楽しそうにしている西谷くんがとても可愛く思えた。
『帰ってきたら、会ってね』
勇気を振り絞ってそう伝えるのが精一杯だった。
『ぁーー電話したい』
『聞こえないよ』
『じゃあその台詞だけ言って!!!!!』
すぐに着信がきて思わず笑った。
人生で初めてかもしれない。
このボタンに触るのは。
緑の受信ボタンをゆっくりタップする。
「…あ、えっと、聞こえてますか?
ぁ、私が…聞こえないんだった……。
えっと……。
帰ってきたら会ってね。大好き」
恥ずかしさのあまり、すぐに受話器を置くマークを押した。
『なにそれちょくせついってよー!!、、!』
『言った!おやすみ!』
電話越しでしかも私が一方的に言ったのに、なかなか脈がおさまらなくて眠れなかった。
言わなきゃよかったと少し後悔した。

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