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【短編集】【HQ】純情セレナーデ

第11章 ラムネ瓶にのぼる月3(月島蛍)


「蛍ちゃん………」
「どうしたの?」
「もう、無理……」
病院のベッドで横たわる彼女を思い出してしまう。
その時の様子にすごくよく似ていた。

あの時、は高校に進学するためのテストの前にも関わらず、相変わらずの多忙だった。
あらゆることを背負い、自分自身のことも全うしようと戦ったのだろう。
テストが終わった瞬間、倒れた。
入院している間に一度だけ見舞いをしたが、あまりにも弱々しく、いつものエネルギーを感じないは、まるで他人みたいで……。

「蛍ちゃん……、私、もう、なにもしたくないの……。
なんか、ね、お金が生まれちゃうと、私、怖くて、上手くできないの……」
そこは、の弱すぎる根底を考えていなかった僕の責任だ。
彼女は、元々凄く弱いんだった。
用事を引き受けていたのだって、最初は断れなかったところから始まっていた。
例えば、委員会。
例えば、部活。
学校内だけだった雑用は、段々外に広まり、今や町での便利屋を知らない人なんてほとんどいない程だ。
「、お疲れ様……」
あまりにも儚い彼女を、なんの躊躇いもなく抱き締める。
小さい頃は、ほとんど身長が同じだったのに、いつからか、僕だけが伸びていって。
胸まであるかないかの華奢な身体を壊さないよう包み込む。
「ごめん、の為にやったことだったけど、……ごめん」
素直に謝った。
もう、それしかないと。
「は、今までのやり方に戻していいよ…。
夕方、迎えに来るから。
一緒に小学校の祭りに行こう」
その声が届いたのか、安心したような笑みを浮かべると、ふっと、意識を手放して寝息を立てていた。
しばらく、眠れなかったのだろうか……。
罪悪感が、波のように襲う。
目の下のくまをそっと撫で、労るようにベッドに戻した。

「ほんと、君を見ていると、苛々する」
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