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【短編集】【HQ】純情セレナーデ

第7章 本日は晴天なり(日向翔陽)


「大当たりだ……」
しとしとと降るそれは、地面をすっかり染めていた。
帰るには些か強すぎる。
徒歩通学の為、この中を歩く気にはなれず、大人しく教室に戻った。
「な!ビンゴだろ!」
教室に戻って真っ先に笑顔でそう言ってきたのは、野生のカンでこの雨を当てた張本人。
にかっと笑う顔は、太陽みたいだと思った。
「凄いね」
「家まで送ってくよ!
、徒歩だったろ?」
「いいの?」
「で!俺はチャリを引いてくから、傘さしてくれる?」
「いいよ、それで」
自転車にくくりつけていたせいで、少しだけ開きにくくなった傘を拡げて、私は少し背の高い彼が濡れないように立った。
歩幅を合わせてくれるのに優しさを感じた。
お互いが濡れないように気をつけて傘の位置を整える。

日向くんは、帰り道に色んな話をしてくれた。
好きな選手とか、食べ物とか、最近あったこととか、公園の野良猫と戦ったとか、本当に色んなこと。
毎日楽しそうで、少し羨ましかった。
「あ!ごめん!俺ばっか話してんね!?」
「いいよ、聞いてて楽しい」
「よかったぁ!」
家の前まで本当に送ってくれてとても助かった。
けれど、彼の学ランは半分水に濡れてよりいっそう濃い色をしていた。
「ごめんね、さすの下手だから濡れちゃったね?」
「それはしょうがないよ、もでしょ?」
「…鞄が助かったから、大丈夫」
「よかった!じゃあまた明日!」
傘を持ち直して、器用に自転車を漕ぐ後ろ姿を見送る。
なんとなく、一緒に帰れたのが嬉しかった。

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