第4章 アンバランスな雌豹(山口忠)
てっきりあの子はツッキーが好きなんだと思ってた。
いつも俺といるのも、ツッキーとの接点が欲しいのだと。
雨上がりの屋上で、彼女は俺に告白した。
水面に彼女の白い布が写る。
そこに集中力を注いでしまっていたから最初何言っているのかよくわからなった。
「す、き、なんだけど……」
「ツッキーが」
「違う…!山口くんが……」
「は?」
そりゃあ願ったり叶ったりではあった。
彼女は、校内でかなり有名な美少女に入る方だった。
すらっとしていて、きついけど綺麗な顔をしていて、都会的なお洒落さで、ツッキーと並ぶと、それは芸能人のカップルみたいだった。
(と、勝手に思っていた)
だから、相手すらしてもらえると思っていなかったから、凄く戸惑った。
「山口くんは…?
他に…好きな子とか、いるの?」
いつもの冷たい顔が情熱的で、意外だった。
「や……いない、けど…」
「私じゃ、不満?
可愛いげないし、身長でかいし、女の子らしくないし……」
「そんな、そんなこと…!
いつも綺麗だと思ってる!
だから、逆に…ツッキーじゃなくていいのかな?って……」
「当たり前じゃん」
風が吹いて雨上がりの水溜まりが水面をうつ。
彼女の心臓を表すかのように揺れて、波紋がわき起こる。
「山口くんが、好きなんだもん」