第1章 ジャンヌダルク(及川徹)
初めて見たときは、小学生が迷い込んで来たのかと思った。
チビで、童顔で、つるぺた。
「どうした、チビ。迷子?」
だから、そう声を掛けた。
「ち、チビは認めます!
ですが、私はこれでも立派な女子高生です!」
キッと、真ん丸な瞳が此方を睨んでくる。
「いやいやいや、な訳ないでしょ。
知ってる?現代の人間の平均身長」
「知ってます、ですからチビなのは認めると今私は言いました!」
鞄から出してきたのは、そう、同じ高校の学生証。
写真もばっちり本人だ。
「………偽造?」
「違います!!」
地団駄を三回踏んだところで、一旦頭を撫でてやる。
「ごめんごめん、からかいすぎた。
ちゃんね、覚えとく」
そういや、女の子にここまで素で悪態ついたのはどのくらいぶりだろう。
まあ、もう会うことはない、そう思っていたのだが。
「新しい……マネージャーとして……」
また会った。
俺の顔を見るなり、悪態をつきながらの自己紹介をメンバー全員にする。
「私、このスポーツ、大好きなんです。
でも体型と、残念すぎる運動能力で出来ないんです。
だから、精一杯支えます」
ぱきっと、凛とした声が印象的だった。
「なんだ、そんな態度も取れるんじゃん」
からかいながら聞こえるように呟いた。
俺の腰程にしかない身長は、また睨み付けてくる。
見上げられているのに、見下されている。
「ちゃん、もっと、可愛く出来ないの?」
「あなたみたいな人、嫌いなんです」
「あっそ、俺も気の強い女は嫌いだ。
ちゃん、知ってる?
女は愛嬌って」
「…っ!」
一瞬たじろいだが、また体勢をすぐに整える。
「愛嬌なんていりません。
私は男でも女でもなく、私ですから!」
あーあー、面倒なタイプだ。
少し触ったらセクハラとか言ってくるタイプの女。