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生贄のプリンセス【Fischer's】

第5章 今更


「ちょっと、ンダホ遅い!」

私の歓迎会が行われて数日が経った。
何事もなく、緩やかな日がまた流れていくのだと思っていた。
カレンダーには赤丸が大きくつけられているのにも関わらず、誰も気付かなかったのだ。

6月20日、つまり今日。
王様が、私達の様子を見に訪問してくる日だということを。

王様は、まるでRPGの世界のように偉い人で、寛大な方らしい。
そんな王様に敬意を払わなければ、ということで、今日は私達も正装をした。

「急げ急げ!」

玄関前は常に慌ただしく、メイドさん達もめまぐるしいほどに動いている。
シルク達も、数分前にモーニングコートを着たばかりで 身なりはそこまで整っていなかった。

私は、思い出の人魚柄のワンピースを身にまとい、王様を待つ。
時の流れは速い。でも、どこかゆっくりで__この時を待ちわびていたかのように、身体はウズウズとしていた。


「皆、もうすぐ王様が来るから、並んで」
私を真ん中に、皆は並んだ。

シルクが、私の顔をジッと見つめる。
なに?と聞いて笑うと、彼は優しく 触れた瞬間そのまま溶けてしまいそうな笑顔で

「……やっぱ、お前にはそれが似合ってる」

と、呟くように口にした。
私もその笑顔とそっくりに、〝ありがとう〟と言う。


王様は、私を認めてくださるだろうか。
王様は、私を見てどう思われるだろうか。

怖いほどに緊張する。
息をのむ暇もないまま、ゆっくりと、玄関の扉が開いた__。
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