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生い立ちの歌《文スト》

第2章 『頑是ない歌』





それだけ言うと泰子は再び窓の外へ目をやる。
当時は気にすることもなかったが、真逆そこまで危険な薬だとは思っていなかった。
何か嫌な予感がする。
流れていく景色を見ながらぼんやりとそんなことを考えていた。
やがて車は目的の店へと到着する。
手狭だが小洒落た店内へ入ると店員に案内され、二人は席に着く。



「見た感じ普通の店だな」

「そうね。中也何食べるの?私はBランチ」

「決めんの早ぇな。同じのでいい」

「ドリンクは?」

「珈琲」

「牛乳じゃなくていい?背伸びないよ。あ、もう伸びないか」

「手前...俺より小さい癖に...」

「すいませーん」



中也の言葉を無視して泰子は店員を呼ぶ。
Bランチが2つと食後に珈琲とアイスティー。店員は注文を繰り返すとキッチンの方へ去っていった。



「で?どうやって調べるんだよ」

「食べ終わる頃にわかるさ」

「ちゃんと説明しやがれ」



またも中也の言葉を無視して、泰子は鞄から文庫本を取り出し読書に耽る。
中也も諦めて出された水を飲みながら彼女を見ていた。
黙っていれば美人だと思う。
おまけに機械に強く頭も良い。



「何?さっきからジロジロ人の事見て」

「勿体無ぇなと思っただけだ」

「人の事言えないでしょ」



性格は悪いと言うよりもよく解らない。
昔から本心を見せないのだ。よく笑うが心から笑っているようには中也には見えなかった。
やがて注文したランチが運ばれて来た。
Bランチはシンプルなオムライスだった。二人は特に会話をすることもなくオムライスに手をつける。
先に食べ終わった中也は、先程まで泰子が読んでいた文庫本に手を伸ばした。



「中也には理解出来ないと思う」

「理解云々の前に面白くねぇ」



数頁パラパラと捲るも、中也にとっては只の文字の羅列だ。本を読むことは諦めて店内を見渡した。
店員はホールに4人。キッチンは見えないがその店内の広さであれば、恐らく1人だろう。客はお昼時というのもあってテーブルがほぼ埋まっている状態だ。
本当にごく普通に思えるこの店のパソコンから泰子のパソコンへのアクセスがあったのだろうか。



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