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生い立ちの歌《文スト》

第7章 『春日狂想』





泰子が眠り続けて三日が経った。
鷗外から休みを貰っていた中也は殆ど眠らずに彼女の傍についていた。
しかし三日も眠らなければ人間の体は限界を迎える。
中也は少しだけ、と決め瞼を閉じようとした。



「全く、酷い顔だね...中也」

「っ...!」



頭上から聞こえた泰子の声に中也の頭は一気に覚醒した。
少し掠れてはいたものの、泰子はしっかりと言葉を口にした。



「おい、何処か痛む所とかは...」

「無いよ」

「水飲むか?」

「お酒が良い」

「巫山戯んな。──ったく、元気そうじゃ無ェか」



泰子は、飲めと言わんばかりに差し出されたペットボトルの水を素直に受け取り、上半身を起こすと一気に半分近く迄飲み干した。



「──っはぁ...。どの位眠っていた?」

「三日だ」

「其れはまた...随分と眠っていたね」

「本当にな」



ペットボトルを手にしたまま、泰子は黙って中也を見つめた。



「助けてくれて有難う」

「おお」



素直にお礼を言われ、面食らった中也はぶっきらぼうに返事をするが、その表情は晴れやかだ。



「拘束されている間、昔の事を思い出していた」



窓の外を眺めながら、ポツリと泰子は呟いた。



「昔の事は太宰から聞いた」

「そうだろうね。私が異能力に目覚める迄、そして今に至る迄を考えていた。織田作の件があって、太宰は組織を抜けた。その気持ちも解らない事もない。私だって君が殺されたらどうするか解らない」

「俺は死な無ェよ」

「君はしぶとそうだからな」



何時もの様に揶揄う言葉だったが、今日は声色が違った。何時に無く穏やかな口調だった。


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