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生い立ちの歌《文スト》

第7章 『春日狂想』





中也の車まで戻って来ると、其処には車に乗った国木田と与謝野の姿があった。



「──頼む、此奴を助けてくれ」



与謝野に頭を下げる中也に、普段の威勢は無い。



「──真逆ポートマフィアの幹部が頭を下げるとはねぇ...。まあ、妾は医者だよ。後は任せな」



中也の車の後部座席に横になっている泰子に、与謝野が治療を施していく。
鉈を持ち出した際には中也は動揺したが、太宰に制止され黙って様子を見守った。
やがて泰子は顔色も戻り、すやすやと寝息を立てていた。



「暫くすれば目覚める筈だよ」

「助かった」

「言っておくけど、これで貸し一つだよ」

「嗚呼、解ってる」



それじゃ、と与謝野は国木田の待つ車へ乗り込むが、太宰は未だ動こうとしない。



「手前も帰れ。あとは俺が看る」

「泰子が目を覚ましたら知らせてくれるかい?」

「わーったよ」



中也の返事を聞くと太宰も車に乗り込み、車は発進した。
探偵社の車が見えなくなってから、中也も車に乗り込み自宅へと車を走らせた。



「おい...さっさと目ェ覚ましやがれ」



中也は泰子に向けて言うが、彼女の目は閉じた儘だった。


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