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生い立ちの歌《文スト》

第4章 『北の海』





翌日、中也が泰子の家の前迄迎えに来た時、既に彼女はマンションの前で待っていた。



「で、何を購うんだ?」

「パソコン。重い物を購う時には中也の能力が非常に便利だからね」

「そんなもんの為に俺の能力を使うな」

「善いじゃないか。私の能力じゃ軽く出来ないんだし」



反論する気も起きず、中也は電化製品店へと車を走らせた。駐車場へ車を停めると、泰子は中也を置いて店内へと入る。
中也も後から彼女を追ってパソコン売り場へと向かった。



「んー...もう少し容量が欲しい」

「当店の品では此方が一番の性能です」

「まぁ少し弄れば善いか...。これと彼方のディスプレイを頂戴」

「畏まりました。ご用意致しますので彼処の席にかけてお待ち下さい」



小一時間程吟味して、漸くお眼鏡にかなう物を見つけた泰子は上機嫌で席に座った。近くでフラフラとしていた中也も隣に腰掛ける。



「パソコンにそんな大差あんのか?」

「大いにある」

「よく解ん無ェな...」

「いいよ解らなくて。此れは私の専門分野だからね」



暫くすると頼んだ物を積んだ荷台を押しながら店員がやって来る。泰子は慣れた様子で用紙にサラサラと記入事項を書くと店員へカードを渡し、会計を済ませた。
車まで品物を運んでもらい、二人は車に乗り込む。



「次は服ね」

「まだ購うのかよ」

「勿論。今日は買い物をすると決めたからね」



中也は昨日の内に仕事を進めておいた事に安堵しながら車を走らせた。



「何方の色が善いかな」

「手前なら此方の色だろ」

「じゃあ此方にしよう」



服屋に入ってから何度目かのこのやり取り。泰子は中也の服のセンスは認めているようで、中也が善いと言った方の色の服を店員へ渡していく。



「いやぁ、物欲を満たすのは善いねぇ」

「そりゃ良かった」

「じゃあ最後に、今日のお礼と言ってはなんだが私の奢りで晩ご飯でも食べて帰ろう」

「其れ位はして貰わねェとな」



二人は笑うと最後の目的地であるレストランへと向かった。
落ち着いた雰囲気の店は、何度か二人で来たことがある店だった。店員は二人の姿を見ると一番眺めの良い席へと案内した。


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