第8章 四獣のさだめ
ハヨンが孟の城で生活を始めて、一週間が経った。相変わらず人手は足りないが、毎日の仕事にも誰がどこを担当するかがおおむね決まってきたので、秩序のある生活を送れるようになった。
半分客人扱いである老婆や青龍は、時おり孟の町へと出かけていったり、気ままに過ごしているようにも見えるが、大抵はどこにいるのかわからないので、謎に満ちたままだ。
そんな中、ハヨンはリョンヘから召集がかかった。
いつも午後から任されていた城の裏門の警備を、他の兵士に頼んで交代してもらい、約束のリョンヘの執務室に向かう。
その途中、鮮やかな青の衣を纏う、長身の男の後ろ姿を見つける。どうやらあの青龍のムニルだ。彼は長身長髪で、人目を惹くような色の衣を着ているので、一目見てわかってしまうのだ。
(あの人は…悪い人じゃないけど、どう接したらいいかわからない…)
ハヨンの周囲では、あんなに抱き締めたりする人物は母ぐらいしかいなかった。その上、女性のハヨンよりも何だか女の色気を纏っている気がする。彼は今までに会ったことのない人物だ。
話しかけようかとハヨンが躊躇っていると、ハヨンの気配に気づいたのか、彼が振り向く。
「あら、ハヨンさんじゃないの。」
「ムニルさん、こんにちは。」
彼の柔らかな笑みは、人を惹き付ける力があるのだろうか。ハヨンも自然と笑みを浮かべていた。
ハヨンはムニルが佇む方向が進行方向なので、そのまま彼に近づいていく形になる。ムニルはその場でじっとしていた。