第7章 錯綜
「…それは。1つ目を除いて、すべてあくまでも推測だろう?」
と思われるや、かもしれないなど、あくまでも息子の見解だ。
「…ですが」
ヨンホはそれでも食い下がる。
「確かに、考えうることだし、この国に関わる大きなこともある。何せ、我々の国を狙う者たちは少なくないからな。」
豊富な鉱山資源は、誰でも喉から手が出るほどほしいものである。実際、滓には何度も攻めいられた歴史がある。
少しヨンホの顔が晴れやかな表情になる。王の考えを察したのだろう。
「とりあえず今は情報が必要だ。諜報するものをあと何名か派遣しよう。」
「…!父上!ありがとうございます。」
いつもあまり表情を出さないヨンホが、喜色を浮かべており、王は新鮮にみえた。
「指揮はお前に任せるとする。頼んだぞ。」
「はい!」
王はヨンホに背を向け、城の中へと戻っていく。
(…。燐は獣を操る特殊な力を持っている…。どこの国よりも特殊な国だ。この国に何かが起こると、否応なしに周辺諸国も巻き込まれるだろう…。それは私もわかっていることだ。しかし、今回の反逆、何やらおかしな点が多い。)
王は城を仰ぎ見る。城の天文台の縁に並んでいたカラスたちが、いっせいに飛び立った。
(…気味が悪いな。)
王は頭のなかで考えたことを振り払いながら、城内に戻ったのだった。