第7章 錯綜
「これはどういうことだ!」
男はたった今書状を携えて返ってきた手下に怒鳴り散らした。手下の男は肩をすくめてその怒鳴り声をじっと耐える。
「も、申し訳ありません!しかし今の燐ではリョンヤン様が正真正銘の王であり、リョンヘは逆賊である、と何度説得してもヨンホ様は納得されないのです。」
男は気にくわない様子で、手にしていた書状を手下に投げつけた。紙ごとき大して威力もないが、主がとてつもなくいらいらしており、手下は主の醸し出すその険悪な雰囲気にたじたじだった。
(くそ!これで滓がこちら側につけば、青龍相手でも倒せるぐらいの援軍を見込めたのに…!)
男は歯軋りしながらもう一度その書状を拾い上げた。しかし何度読み返しても結果は同じ、 リョンヘ殿が貴殿のもとへ戻っていらしてないのならば、その同盟は有効とはなっておらず、我々は動くことはできません、 といった内容が書いてあるのだ。
「リョンヘの小僧も、あのハヨンとか言う女も、四獣も、滓のヨンホも全て気に食わん!」
男は部屋をぐるぐると歩き回り始める。
(そもそもリョンヤンからだって軟禁状態にして、脅しながら権威を奪っているようなものだ。あれはなかなかしぶといやつだから、いつ何をされるかわからない…)
しかし男のこの反逆は、まだまだ動き出したばかりだ。そのためできるだけ多くの手札を残しておきたい。だから危険だと思ってすぐさま切り捨てるのは今のところはしたくないのである。