第5章 新たな仲間
「わ、わかりません…」
どうしてだか言葉遣いが敬語に戻ってしまう。これ以上喋ったら、頭が、早鐘を打つ心の臓が、どうにかなってしまいそうな気がして、ハヨンは口を開けなかった。
「俺はやはり、あんたをどこかで特別扱いしているらしい。リョンヘの時、リョンの時の両方とも親しく、何でも話してしまえるのはあんただけだから。だからリョンヤンの命や、俺への気遣いで無理をしてここにいたりはしないかと気になってしまったんだ。」
リョンヘが笑む。先程までの笑みとは全く違い、どこか妖艷さを感じた。本当は広い部屋のはずなのに、とても窮屈に思える。緊張で息苦しく思える。でも、離れがたく感じていた。
(何でこんなに緊張してるんだ、私…)
「私は本当に臣下としても、友達としてもリョンヘ様の力になりたいと思っているから…。心配しなくて大丈夫ですよ…」
ハヨンは体温が上がってきている気がした。そして彼に握られたままの手が汗ばんではいないかととても気になってしまった。
(汗びっしょりとかだったら恥ずかしすぎる…。)
かと言って離してしまうのもリョンヘを傷つけそうで何だか嫌だ。
「俺はもっとあんたに甘えて良いと言う事を頭に置いておくよ。」
「はい、お願いします…」
その時、部屋の戸を叩く乾いた音が響いた。ハヨンは驚き反射的に手をほどく。
「何だ。」
リョンヘはそう戸に向かって声をかける。
「警備のことで相談したい案件がございます。」
「わかった、しばし待て。」
そして再びリョンヘはハヨンへと視線を向ける。
「悪いな、これ以上時間はとれなさそうだ。」
「い、いえ。貴重なお時間ありがとうございました」
ハヨンはこれ幸いにとリョンヘの部屋から飛び出した。