第18章 目覚めのとき
(朱雀…!!)
男は刀を構え、もう片方の手で呪詛を放った。しかし、虚しく朱雀にかわされてしまう。朱雀は脇目もふらず、ただただ一直線に男に向かっている。炎を身に纏い、風になびかせ飛ぶ姿はまさに炎の化身だった。朱雀はついに男の側まで来ると、炎を吐いた。男を守ろうとしていた兵士たちは恐れをなして逃げていく。男は力を使って炎を吸収させようとしたが、目に火傷を負った。
「くそっ…!!」
慌てて傷を癒すが、遅かった。傷が癒えた頃には目の前に鉤爪が迫り、男の顔を引き裂く。
「ぐああぁぁああ!!」
顔の傷口から己の魔力が噴き出した。慌ててそれを抑え込む。この何百年もかけて貯めてきた魔力を、ここで失うわけにはいかない。そのことで反撃が遅れた。次は背中を衝撃が襲う。旋回して朱雀が引き裂いたのだ。
「うろちょろと下劣な鳥が…!!」
なんとか呪詛をもう一度放ち、朱雀に命中した。朱雀は大きく姿勢を崩す。今にも堕ちそうだった。しかし、朱雀の瞳の殺気は消えない。もう一度男に炎を吐き、ふらつきながら姿を消したのだった。
「退けぇ!退けぇ!作戦は中止だ!!」
辺りは火の海で、退却するしか道はない。今の男の状態では、勝てるかどうかも怪しかった。男は歯噛みしながら朱雀の去った方を睨みつけるしかないのだった。