第15章 駆け引き
「なら私も、その修羅の街とやらを一緒に進む。私だって本来は王城にいらっしゃるリョンヤン様の側近だもの。傍から見たらとんでもない裏切り野郎ね。この際、二人の王子を手玉に取る魔性の女にでもなろうかな。」
リョンヘの本当の願いは知っている。誰も傷つかないことだ。自惚れではないが、それはその中にハヨンも含まれているのはわかっている。少しでも彼の拒む色を見たくなかったので、ハヨンは最後に少しおどけてみせる。
ふっとリョンヘは小さく笑った。
「魔性ね。ハヨンとは程遠いな。」
「失礼ね!これでも口説かれたことぐらいあるわよ?」
ハヨンはふざけて流し目でリョンヘを見つめてみる。色っぽくできたかどうかは定かではない。
「うーん、ハヨンはどう頑張ってもそういう気質ではないからな。ほら、どうしても真面目だから。」
「くーっ、伝説に残る絶世の魔性の女にはなれなかったか…。なら最初の方針通り、どこまでも主人についていく篤い女剣士に路線修正する。」
「自分で言ってしまって良いのかそれ…」
ハヨンたちは久しぶりに軽口を叩き合っていた。ハヨンの冗談にリョンヘが乗ってきたのは自身の決心による情動を隠したかったからなのか、それとも忍び寄る戦の空気を少しでも明るくしたかったのか、それは定かではない。
しかし、戦の足音は着実に近づいているのだった。