第14章 己の正体
「俺は四獣の全員に会って、仲間になってほしい。俺の力になってくれる人たちは限られている…。それに民達をできるだけこの戦に巻き込まないうちに決着をつけてしまいたい。そのために共に戦って欲しいんだ」
リョンヘはそうソリャとムニルを交互に見てそう言った。
「…つまりそれは人を傷つけるって訳だな?」
ソリャがそう低く呟き、眉根を寄せる。ソリャにとってはもうこりごりな話らしい。
「つまりはそう言うことだ。でもこれは俺にとっても本望ではない。戦なんて負の感情が生まれるばかりだ。でも、これを避けたところで、向こうはこの国を無茶苦茶にするつもりだ。そんなことが起きればもっと酷いことになる。」
「…」
ソリャはリョンヘに何も返事をせずにいたが、どうやら迷っているようだ。ソリャがこの事を決めるにはまだまだ時間が必要だ。その様子を見ていたムニルはそう考えた。
(まぁ、あの町から出てきたばかりで、何もかもが始まったばかりだもの。初めてのことも多いはず。そんな中でいろいろ言われても戸惑うわよね。)
うつむいたソリャの姿は、ムニルには小さな子供のようにうつった。
「私は今回の戦に出るわよ。私はこの国の行く末なんて気にしたことはないけどね。それなりに自分でこの戦に意味は見出だしてる。」
ムニルはそうソリャに向かってそう言った。
「意味…」
「無理に戦えとは言っていないから、ソリャは戦いたくないならそれで良い。ただ、俺がどう思っているかだけは知って欲しいと思ったから正直に言った。」
「…わかった。」
ソリャはそう言って首肯く。そんなやり取りをじっと見ていた老婆の視線はどことなく鋭いような気がして、ハヨンは少しぞっとした。
今まで老婆の本心を一度も知ったことがない。老婆はこれから始まる戦のことををどう思っているのだろう。