第14章 己の正体
ハヨン達はそれぞれ疲れを癒してから、再び老婆の部屋の前に集まった。
「リョンも来たんだ。」
ハヨンは久々に現れた城の主人に、こぞって話しかけようとする兵士達の姿を見ていたので、忙しいだろうと思っていたのだ。
「来たんだとはなんだよ、来たんだとは。俺だって四獣について知りたいことが山ほどあるんだからな。」
どうやら忙しいと思っていたのは間違いないようだ。口を尖らせて話すリョンの髪は、少し湿っている。どうやら慌てて髪を乾かしたようだ。それに対してムニルとソリャは髪は乾いていた。
「ごめんごめん、色々と忙しそうだったから」
「ハヨンちゃん、もっと言っても良いのよ。この人ね、誰にも咎められなかったら日常生活に必要なこと、全部疎かになりそうで怖いもの。浴場でも、疲れを取るためにゆっくり入ればいいのに、烏の行水だったのよ?」
どうやらムニルもリョンヘの忙しさにはいろいろと思うところがあるようだ。
「大袈裟だな。別にしっかり体は洗って汚れは落としているんだから。」
ハヨンはどこまでも仕事第一なリョンヘを、尊敬していると同時に、心配になってきた。
「何を人の部屋の前でごちゃごちゃと喋っているんだい、お前たち。さっさと入りな。」
ハヨンがリョンヘに何か言おうと口を開いた瞬間、扉を開けて老婆が会話に入ってきた。
「あ、すみません。」
ハヨン達は老婆の部屋に入った。相変わらず最小限のものしかなく、少し殺風景な部屋だった。以前ハヨンがこの部屋を訪れた時と同じように、寝台に座れと促された。今回は男3人もその状態であり、なんとも窮屈な状況だ。ハヨンは思わずその妙な光景に、笑いそうになるのだった。
「さて、あんたは何て名前なんだい?」
老婆はそう言ってソリャを上から下へと舐めるように見る。ソリャは緊張したのか少し体を強張らせた。
「ソリャだ」
そう掠れそうな声で答える。
「それはそれは。ぴったりな名前だ。」
老婆は感心したように何度も頷く。ソリャという名前には、雪という字が当てられることが多い。白虎の白い髪や瞳はまさに雪のようだった。