第10章 形単影隻
「…どうして後から真実がわかったんですか?もしや、誰かその場にいた者が…?」
リョンヘはそう優しく老人に問う。先程の話題は根深いと感じたからだろう。少しだけ緊張感が解ける。
「実はあの子を驚かそうと、木の上に隠れていた子供がいたんじゃ。最初は怖くて何も言えなかったのだそうだが、しばらくしてわしに教えてくれた…。それに幼い子らは彼を慕っていたから、彼はそんなことはしないと言っていたし、今でも彼を気にしているようだしな。」
「そうだったのですか…」
町には白虎を憎む者しかいないのだと思っていたので、ハヨンは少しだけほっとした。
「あの一件でわしは孤児院をやめてな。そのせいで幼い子供は他の地域の孤児院に移っていった。数人はここの辺りで奉公しているから、あの子の生活のために、時おり食事をこっそりあの子がいそうな所に置いているらしい。」
(だから白虎に食事と寝床を与えれば襲われないとみな言っていたんだ…。)
ハヨンはそれを聴いて、町の者達の噂に納得した。白虎を慕っていたものが食事をこっそり置く姿を見たか、もしくはその子達がそう言う噂を作って、白虎が無事に過ごせるようにしているのだろう。
「それで彼はこの町でもなんとか生きているのですね…」
きっと食事も寝る場所も無かったら、白虎も命の危険に晒されていただろう。この町で白虎を雇うものはいないと考えた方がいいし、お金もない。そして、これ以上騒ぎがあれば、白虎を恐れている者たちも、何か行動を起こしていただろう。
「でも、どうして彼はこの街を出ていかなかったのかしら…。新たな町でなら、尻尾とかも隠すなりして、生活できたかもしれないのに…。」
ムニルはそう首を傾げた。それはこの赤架で白虎を探し始めた頃から、三人とも不思議に思っていたことだった。
「それはわしも想像するしかない。あの子は生まれてすぐここに捨てられた。それに、この町、いや、この郡全体で恐れられている…。そんな状況では新しい町でも、そうなるのでは…。と考えているのでは、とわしは思っているんじゃ…。自分は誰からも必要とされていないし、されてはいけない存在だと…」
ハヨンは白虎に助けを借りようとすることがどんなに難しいことかを改めて知るのだった。