第17章 Episode 16
「千さん、Re:valeの新曲聴きました!私ずっとRe:valeのファンなんです」
「そう、ありがとう」
「千さんと共演させてもらうのは初めてですよね、私すごく嬉しくて〜!」
「そうね」
ユキ、絶対聞いてない。
隣でハラハラしている岡崎さんをよそに、ユキはずっと窓の外を眺めていた。
「Sakuraさんはこれが初めてのドラマなんだよね。演技上手くて驚いたよ」
「あっ、はい!ありがとうございます。まだまだ勉強中ですが、色々なことに挑戦したくて」
上司役の俳優さんが声を掛けてくれる。
色々とスキャンダルの多い俳優さんだが、いつも親切に声をかけてくれるし、実際はいい人なのかもしれない。
「Sakuraさんってぇ、いつも千さんとしか話さないですよねぇ?なんでなんですか?」
明らかに棘のある話し方で女優さんが私に質問をしてくる。
「以前から面識があったので...」
「へぇ、羨ましい〜!私もこれから千さんのこと知っていきたいので、仲良くしてくださ〜い」
女優さんは私の答えなんてどうでもいいと言うように、千に話しかけている。
これはあれだな。完全に目の敵にされている。
当たり障りなく関わった方がいいパターンだ。
ユキの塩対応にもめげることなく、女優さんが話しかけているうちに、ロケバスは目的地へと到着した。
まずは宿泊する旅館に荷物を置き、それからリハーサルと本番を数シーン分撮影する。
「さくら、部屋隣りだね」
「うん。その隣りはお兄ちゃんと岡崎さんだけどね」
「千さ〜ん!お部屋隣りですね!うれしいっ」
「そうね」
私とユキが話しているとそこへ入ってきたのは、ロケバスでも一緒だった女優さん、佐藤ひかりさんだった。
部屋の並び順は、佐藤さん、ユキ、私、お兄ちゃんと岡崎さん、という順番だ。
キャストには一人一部屋、同性のマネージャーは二人で一部屋という部屋割りだ。
向かいの部屋は上司役の俳優さん、山田秀樹さんと彼のマネージャーさん、ひかりさんのマネージャーさんという部屋割りだった。