第17章 Episode 16
本読みやリハーサルも終わり、ついに本番の撮影日がやってきた。
主題歌も監督さんからOKをもらい、順調に進んでいる。
「本番いきます」
スタッフさんの掛け声に、私は一度だけ深呼吸する。
最初は私のアクションシーンから始まる。
ふと、ユキを見ると微笑みながら頷いていた。
大丈夫だよ、と言ってくれるようで私は安心して撮影に臨むことができた。
『警察は無能な奴しかいないと思っていたが...お前は面白いな。名前は?』
『お前のような犯罪者に名乗る筋合いはない』
『いいな、その反抗的な目。興味が湧いた』
『すぐに捕まえてやる』
「カット!チェック入ります」
監督さんとスタッフさんがチェックに入り、OKをもらうとその日の撮影は終了した。
次の撮影は地方へのロケだ。
泊りがけの撮影になるため、準備をしなければならない。
「泊りがけのロケって、ちょっと楽しみだよね」
「ユキでもそんな風に思うんだ」
「さくらとどこか行くなんてしたことないでしょ」
「そりゃそうだけど」
楽しみにしているのは私も同じだ。もちろん、理由も。
監督さんから少しにはなるけど、観光する時間もあるからねと言われていたため、私は撮影の合間を縫ってロケ地の下調べまでしていたのだ。
「温泉が有名みたいだね」
「うん、絶対入るって決めてる」
「僕も温泉は楽しみだな。ねぇ、どこか行こうよ」
「大丈夫かな?」
「変装すれば大丈夫でしょ。最悪岡りんかバンについてきてもらえばいいし」
ユキと観光できるのが楽しみで、私は上機嫌だった。
そしてあっという間に地方ロケの日がやってきた。
「さくりん!お土産、楽しみにしてるからな!」
「うん、環はいい子で待ってるんだよ」
「あの人に手出されんなよ」
「大和はなんの心配をしてるのかな」
「さくらさん、頑張ってください!帰ってきたら色々話聞かせてくださいね!」
「ありがとう、陸。体調には気を付けるんだよ」
可愛い後輩たちに見送られ、私とお兄ちゃんはロケバスに乗り込んだ。
車には私とお兄ちゃんとユキと岡崎さん、ユキの部下役の女優さんと私の上司役の俳優さん、その2人マネージャーが乗っていた。