第11章 終わりよければすべて良し
朝のミーティングにも跡部くんは姿を現さず、集会場に集まった皆が口々に心配の言葉を口にする。
彼に近しく、昨日看病していたという理由で、私の周りに人だかりが出来、跡部くんの容体について質問攻めにあってしまった。
「う、うん。まだ体調がよくないみたいで…ベッドでずっと休んでるよ」
昨日ロッジで樺地くんにすげなく追い返された氷帝の子達も不安げな顔を隠しきれないでいる。
そんな中不穏な空気を身にまとった人物が一人、少し離れたところからこちらを窺い見ていた。
「…本当に体調不良なんでしょうかね」
ポツリとつぶやかれた木手くんの言葉に、一番不安そうな顔をしていた鳳くんが大きく反応する。
くるりと木手くんの方に顔を向けて大きな声をあげた。
「木手さん、こんな時に何を言っているんですか?!」
「…どうせ、キミもあいつとグルなのでしょ?そんなに必死で仲間をかばわなくてもいいですよ」
やれやれ、といった風に首を振って木手くんはゆっくりとした動作で眼鏡をかけなおす。
それが嫌に人を馬鹿にしているように見えたのか、鳳くんの声がワントーン低くなりそこに彼は怒りを隠そうとしなかった。
「何を言っているんですか?」
話が見えないといった顔で言う鳳くんを、木手くんはうさんくさそうなものでも見るような目でジロリと睨んだ。
「ああ、それともキミ達には教えられていないのですか?そうだとしたら可哀相に。跡部に信用されていないのと同じだ」
くくっと喉をならして嫌な笑みを浮かべる木手くんにみんなの向ける目は自然と厳しいものになっていった。
「木手、お前何が言いたいんだよ。ハッキリ言えよ!」
ふるふると怒りに震える鳳くんを制すように、宍戸くんが身を乗り出して木手くんに突っかかって行った。
自分をかばうような姿勢で木手くんに立ち向かう宍戸くんの姿に鳳くんは少しばかり驚いていたようだった。
「…跡部は俺達含め他校の生徒を全国大会前に怪我させるつもりだ」
木手くんの言葉に集会場は一気にしん、と静まり返る。
突拍子もない彼の発言に同意を示すものは今のところいないようだった。
けれど木手くんの言葉を否定しきることも出来ないのか、それともあまりにも突飛すぎて頭が回らないのか、誰も言葉を発さない。
「な、何言っているの!そんなわけないでしょ!」