第7章 『薬』
1日にいっぺんに色んなことがありすぎて、体はとても疲れていた。
鉛のように重くなった体を引きずって、割り当てられた自分の部屋へと向かう。
つぐみちゃんと彩夏ちゃんは海と山の間のロッジを使うようだったが、私は海側の離れロッジのそばの部屋を使うことになった。
ちょうど木手くん達比嘉中のロッジの近くだ。
部屋に入って、はたと気が付く。
着替えを何一つ持っていないことに。
他の子達は荷物を持って船から脱出していたようで、着替えやお菓子、はてはゲームまで手元にあるようだった。
私が持って逃げられたのは、立食パーティーの会場に持って行った小さなカバンだけだった。
そのカバンの中にあるのは、財布とスマホと小さな化粧ポーチだけ。
「いっぱい汗かいたしなぁ…着替えたいけど…」
しばし思案して、私はつぐみちゃん達のロッジに向かうことにした。
彼女達に少しだけ着替えを貸してもらえないか頼もうと思ったのだった。
「いいですよ、どれでも使ってください」
2人は快く私のお願いを受け入れてくれたが、問題が一つあった。
それは彼女達の体格と私の体格に、少しばかり差があったことだった。
試しに借りた1枚のTシャツに袖を通そうとするが、生地がピンと張ってしまってそれ以上着ると破けてしまいそうだった。
「ごめん…ちょっと小さいかも…」
「すみません、他のサイズのはなくて…」
「えっ、謝らないでよ!むしろ私がごめんって感じ…」
彼女達の華奢な体が羨ましい。
私も中学生の頃はそのくらい華奢だった気がするが──それが遠い昔のことのように思える。
「そうか…まあなんとかするよ。お邪魔してごめんね~」
「あ、あの、下着は大丈夫なんですか?」
「んっ?ああ、そうだね…下着もなかったわ…どうしようかね…さすがにノーブラノーパンはヤバいよね。かといって洗濯しないわけにもいかないし…」
「そうですね…。あっ、だったら水着を着たらどうでしょうか?私ビキニ持ってきてるから、それで代わりになりませんかね?」
そう言って荷物からつぐみちゃんが取り出したのはレースのついた白くて可愛い水着だった。
多少胸がはみ出そうな気はしたが、何もつけないよりはましな気がした。
「わっ、ナイスアイディア!遠慮なく借りていくね、ありがとう」
「いえ、また何かあったら言ってくださいね」