第6章 距離
他の子達は他校同士で協力し合う姿勢を見せていたが、比嘉中の子達は全くそんな気はなさそうで、ロッジの探索が始まった今でも周囲に姿は見当たらなかった。
一体どこに行ってしまったのだろうか?
跡部くんは放っておけ、と言っていたが、万が一彼らに何かあったらという思いが頭をよぎり、彼らを探しに向かうことにした。
緊迫したあの状況下で冷静に動ける木手くんがいるなら、多分彼らだけでも大丈夫だとは思う。
また迷惑だと思われてしまうだろうけど、それでも何か心配だったし、手助けしたかった。
きっとこれからも彼らは他校の子達と衝突を繰り返すだろう。
大人びた子達が多いとはいっても、みな中学生だ。
一応ギリギリ成人している私が、どこかで手助けをしないといけないだろう。他に大人はいないのだ。
と言いながら木手くんに助けられてばかりの今までの自分の姿を思い出して、ため息がでた。
比嘉中の子達を探して回るが、彼らの姿はなかなか見つけられなかった。
傷心旅行のはずだったのにとんでもないことに巻き込まれてしまったけれど、落ち込む暇もないのは有り難かった。
余計なことを考えずに済む────。
乗船前に見た、ディスプレイに浮かぶあの名前を少しでも、頭の中から消しさりたい──。
「こっちにはいないかぁ…もしかして海の方…?」
ロッジは山側だけでなく、海の近くにも存在していた。
海辺近くのロッジに向かう途中、そこから少し離れた場所にもポツリとロッジがあるのが目に入った。
なんとなくそれが比嘉中の子達のイメージとかぶって、そちらに足を向けた。
「あ、ここにいたんだ!」
見えてきた紫のユニフォームに声をかけると、ゆっくりと振り返った木手くんは深いため息をつきながら眉間に皺を寄せた。
「…何しに来たんです?」
「何か手伝おうかなと思って」
「…あなたの手を借りる必要はありません。それに、先ほどもお願いしましたよね、俺達のことは放っておいてくれ、と」
また冷たい声で木手くんは私を拒絶する。
迷惑そうな顔で私を見る木手くんに、胸がチクリと痛んだ。
「あっちはいっぱい人がいるからさ。比嘉中の子達は人数少ないでしょ。一人でも増えたら探索するのも効率よくなるし、ね?」