第5章 無人島
跡部くんの言葉が、どこかひっかかった。
さっきの木手くんの言葉が頭の中で反芻される。
『おかしいと思いませんか?全国大会前に、急にこんな合宿を企画して、あまつさえ遭難…何か、出来過ぎていると思いませんか?…あなたは何か知っているのではないですか?』
考えてもみれば、最新鋭の機能を積んだ豪華客船が、ああいとも簡単に座礁するのだろうか。
高性能レーダーはもちろん、乗組員だってベテランぞろいの、叔父さん自慢の船のはずだ。
あの時は必死でよく見ていなかったが、大きく傾いていたにしては、船は思いのほか沈まずにそのまま浮いてはいなかったか──。
そして部屋から頑なに出ようとしなかったつぐみちゃん達の話も気になっていた。
つぐみちゃんが言っていた「どんなことがあっても部屋でじっとしているように」という船長でもある父親の忠告。
普通、船が座礁したら、真っ先に娘には逃げてほしいと思うものではないのか。
「どんなことがあっても」の中に、座礁は含まれていないとでもいうのだろうか?
船長のアドバイスとしてはどこかおかしいような気がしていた。
ぐるぐると私の頭の中をそんな考えが駆け巡っているのをよそに、少年達は見つけた鍵の束を使って、他のロッジを探索を始めるようだった。
私は胸にモヤモヤした思いを抱えたまま、木手くん達の姿を探した。