第11章 I miss you〜SJ〜 5
「あの…ニノ、今夜、時間ある?話したい事があって…」
楽屋でゲームをしているニノに、いつも通りを装いながら隣に腰をおろして、そう声をかけた。
「今日?イベント控えてるから、うちでゲームしながらなら聞くけど」
「うん、それでもいいから…行って、いい?」
「んふふ、変な潤くん。話があるなら、ここで聞くよ」
ゲームから顔を上げてこちらを向いて笑ったニノの笑顔はいつもと同じ優しさを含んでいて…
だからこそ、余計に胸が痛くなる。
(潤くんとの時間は…どれも、俺にとっては、大切なものだから…だからお願い、謝らないで。俺の想い出を、可哀想なものに、しないで)
涙を流しながらそう言ったニノに…
翔君の元に帰るって、伝える事。
そんなの…俺の自己満足かもしれないけど…しれない、じゃなく、自己満足だけど。
でも…
ニノに何も言わずに、何も無かったかの様に翔君のところに戻る事だけは、したくない。
ニノがそんな風に俺を大切にしてくれたから、俺を愛してくれたから…
だから、翔君に向き合う勇気も出た。
「翔さんと上手くいったんでしょ?それとも、何かあった?」
「うん…いや、うんん、上手く、いったよ。ニノのおかげで…だから…」
「潤くんの事だから、俺に悪いとか思ってるんでしょ?仕方ないなぁ、潤くんは。いいよ、お詫びに奢られてあげましょう、惚気も聞いてあげましょう。だから今日は美味しい店、予約しといてよ」
「でも、ゲームは…」
「潤くんの想いが届いたお祝いなんだし、それ以上のイベントはないでしょう。お祝いだけど、潤くんの奢りに変更はないからけどね〜」
楽しそうに笑って再びゲームに顔を戻したニノ。
「うん…ニノが好きそうな店、予約しとく」
「よろしく〜」
そんな俺たちを見ている翔君の視線を感じたけど…
でも、これは俺のケジメ、だから。
翔君ともう一度向き合うために…
優しくしてくれたニノの想いに向き合うために…
でもやっぱり…
結局は、自分のためで…翔君のためでも、ニノのためでも、ないよね。
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