第10章 back again〜SNJ〜2
「あぁ、そうだよ、俺は勝手だよ。好き勝手、都合いい時に都合いい様にお前を抱いて、それでもお前は俺から離れないって思ってたんだから。だから、気付かなかったんだよ。お前がそうやって俺を見てくれている事の、お前の笑顔の、帰る場所として在ってくれるお前の大切さを……失って気付くとか…安っぽいラブソングだ」
「しょぉ…くん…」
「俺は、愛し方も愛され方も、分かんねーんだよ。お前をどう大切にすればいいかも分かんなかった。だから、俺なんかより、お前はニノとちゃんと恋愛した方が幸せなんだよ」
そんな…苦しそうな顔、しないで?
あの頃の俺は…
翔君を好きだった俺は、決して不幸ではなかったから。
その側に在れるだけで、幸せだった。
「俺は…幸せだった、よ?たとえおれが、一番じゃ、なくても…しょーくんがそばにいてくれる
だけで…おれ…を求めてくれるだけで……幸せだった、から…」
涙が溢れて、まともな言葉を紡げなくて、でも伝えたくて…
「お前は、甘すぎんだよ。こんな俺を…そんな風に許してくれんのは、お前しかいないんだ」
涙でボヤける視界の向こうで、翔君の目が苦しげに揺れているのが見えた。
「お前がいないと、無理なんだ。どのツラさげてそんなセリフ、って自分で自分を笑っても、どうにもなんねーぐらい…無理なんだ」
そう言った翔君の体が沈んで…
その両手が床に付けられた。
「今度は大切にするから…だから、俺に潤を返してくれ。俺にも、潤が必要なんだ。もう二度と、間違えないから、だから…」
ニノに向かって土下座する翔君の姿に涙が止まらなくて…
縛られた手に、今更ながら感謝する。
じゃなかったらきっと、ベッドを降りて、翔君を抱き締めてしまっていただろうから。
でも…
翔君を抱き締めたいってその想いと同じぐらい、苦しくて。
だって…
「嫌だよー」
俺に背中を向けて翔君を見下ろしているニノが、楽しそうに言い切った。
「だって、潤くんは俺だって、好きでしょ?」
そう言って俺を振り返ったニノは笑っているけど、でもその目の奥には不安が隠れていて…
大丈夫だって…抱き締めたい。
ニノを好きだって言った想いにも…
嘘は、ないから。