第2章 声を聴かせて〜NJ〜
「最近、ニノと仲良いの?」
他の三人が撮影に行って、翔君と二人っきりの楽屋。
俺はスマホを弄り、翔君は新聞を読みながら時々メモを取ったりして…
それがいつもの事だったし、今日もそうだと思っていた。
だから突然話しかけられて楽屋には自分しかいないのに、それが自分への言葉とは思わず…
「なぁ、聞いてる?」
「……え?」
聞こえてはいたが、聞いてはいなかった。
「ニノと、仲良いのか、って」
「う、ん…仲は、いいと思う、けど…」
「ふーん」
自分で聞いたくせに気のない返事をして、翔君は再び新聞へと目を移した。
その質問の意図が何か聞きたいけど、でも聞ける雰囲気でもなくて…
翔君に聞こえない様に小さくため息を吐いてスマホへと視線を戻す。
ニノは
やめなくていい
って言うけど…もうそろそろ翔君から卒業して、新しい道を歩きたい。
その新しい道は…誰と歩くのかな。
ニノ…?
いや、翔君が駄目だからニノと、なんて、虫が良すぎる話で。
ニノが俺を抱くのだって、あまりに俺が可哀想だったから、だし。
(潤くん可愛い)
(潤くん格好いい)
(潤くん大好き)
(潤くん愛してる)
俺が翔君と別れた時に空っぽになった空間に新しい空気を送り込む様に、ニノは俺にそんな言葉をたくさん与えてくれた。
でも…
ニノは俺に一番を求めないし、翔君を引きずる俺を気にもしない。
それはやっぱりニノの想いも俺にないからだし。
そもそもニノだって男を選ばなくても自分の好みの女の子を選びたい放題なわけだし…
男である俺を選ぶ必要はない。
そんな事をつらつらと考えていた時…
俺のスマホが着信の音を告げた。
誰からのメッセージか、何の気負いもせずに開けて…
「終わったよ〜」
「あ〜早く帰って釣り行きてぇ」
「潤くん、お待たせ。次はセット変えてから五人で、だって」
俺の思考がフリーズした瞬間、撮影を終えた三人がワイワイと楽屋に入ってきた。
「潤くん、今日これで終わりでしょ。家行っていい?」
「えっと…ごめん。飲みに誘われちゃって」
「えー、もしかしてまたコーちゃん?」
「ごめん」
「もぉ、あの人と飲みすぎなんだから。あんま飲みすぎない様にね」
頬を膨らませたニノに笑い返しながら、そっとスマホの画面を黒くした。