第8章 声を聴かせて〜NJ〜 3
「俺も…分からないんだ」
「…うん…」
「しょーくんへの想いが、消えた訳じゃ、ない」
俺の言葉に、ニノの目が微かに揺れる。
それでも、俺を抱き締めたまま、話の続きを促す様に微笑んで俺の隣に腰を下ろしてくれた。
そんな風に…
ニノは自分の心は殺して、俺の話を聞いてくれていたんだよね。
俺がその想いに全く気付かないぐらい上手に隠して…俺の心をフォローし続けてくれていた。
だから…ね…
俺も、この想いを全部、真っ直ぐ話すから。
「ニノに嘘をついた日…ニノが言うように、しょーくんと、会ってた…抱かれた、よ。でも、ね…前みたいに、それを幸せと、思えなかった」
「そう…なんだ。でも、それは、俺に抱かれてた事での罪悪感からじゃ、ないの?」
不安そうにユラユラと揺れるニノの目。
俺だって…そうだった。
今度はいつ捨てられるんだ、って…
いつその心がまた他の誰かに移るんだって…
いつも不安で…愛に、怯えていた。
この想いに、翔君に抱かれる前に気付ければ…
そうすれば…
こんな風にニノを傷付ける事も、なかったのに。
「ニノに抱かれて…大切にされる幸せを、知ってしまったから。ただ、快感の為にする行為じゃなくて…愛を伝える行為をニノは俺に与えてくれてたんだって…ごめん、他の誰かに抱かれて初めて気付くなんて…最悪だよね」
俺の言葉に、ニノが首を横に振って、力なく微笑んだ。
「俺は…ずっと潤くんから話を聞いていたから。だから、潤くんが何を求めているか、分かった。潤くんは…きっと勘違いしてるんだよ。本当の俺は、そんなに優しくも、ない。じゃなかったら…寂しい潤くんの心につけ込んだり、しないでしょ」
「それでも…俺はニノが、好きだよ」
「だからっ…………じゃあ…いいよ。本当の俺を、見せてあげるから」
その目を強く煌めかせて、ニノは俺のシャツに手をかけ、ボタンごと引きちぎった。
「どんな俺でも、優しくない俺でも受け入れるって言うなら、平気だよね、何されたって」
「平気だ、っあ」
下に着ていたTシャツの上から強く胸の突起を噛まれて、その痛みに体が仰け反る。
それでも、その痛みさえ受け入れると伝わる様に、ニノの頭を抱き締めた。