第6章 I miss you〜SJ〜 3
「お前知ってたなら、カマかける様な真似すんなよ、面倒くせーな」
「ふふふ…そうだね、面倒くさい、ね…」
「……なぁ、潤。時間作っても会っても、お互い疲れてて、こんな風に喧嘩になるだけなら、会わない方がいいんじゃないか」
冷静な翔君の声に、俺の頭の中で何かが切れた。
「そ、うだね…。疲れている時に癒し合えない関係なんて、最悪だもんね。面倒な事を言わない、ただヤレる関係の方が、まだマシだよね」
「だから…んな事言ってんじゃねーだろ」
翔君の目が、本気で苛立っているのが分かる。
最近は見る事が少なくなった、翔君の本気の目。
昔は、その目で怒られるだけで泣いちゃったりしていたけど…
「分かった。もう、終わりにしよ」
「お前、本当に分かって言ってんの?」
「分かってるよ。どうせ俺が無理矢理始めた関係なんだから。だから、終わらせるなら、俺から終わらせてあげる」
深いため息を吐いた翔君を見て、俺はゆっくり立ち上がった。
「帰る」
「……雨降ってるし、送る」
「いらない」
「送るって」
俺の癇癪程度に思っているのか、相変わらず冷静にそう言われて…
もう、限界だった。
「送っても欲しくないし、もう、何も、求めない」
これ以上一緒にいたら、翔君に求めるだけで…きっと、翔君から、言われてしまうだろう。
だから、その前に、俺から終わらせてあげる。
「しょーくんなんて、もういらない!」
そう叫んで、カバンを掴んで俺は部屋を飛び出した。
翔君にとって、俺が一番じゃない事も、俺との関係が有益なものじゃないって思われてる事も、分かってたんだ。
だから、俺と会える時間を確保するより、他の誰かとの時間を大切にしている事も、知っていた。
俺といるより、誰かといる方が、楽だから。
俺があげられるのは、肉体がもたらす快感だけで、翔君を高める
知識だとか
教養だとか
そんなもの、一切無かったから。
こんな関係に、ならなきゃ良かった。
こんな関係になるまでは、俺だって色んな事を翔君と話していたのに。
映画を見て…
音楽を聴いて…
一緒に笑って、一緒に感動して…
俺が…それ以上を望まなければ。
その存在を自分のものにしたいと願わなければ。
俺が流した涙は、雨が隠してくれた。